【都市伝説】IT営業が激務という3つの“理由”と3つの“誤解”について

からはち(@kara_hachi)です。

「IT営業は激務ですか?」とよくIT営業未経験者に聞かれるので、

googleで「IT営業 激務」と調べてみたのですが、どの記事も「IT営業が激務になる理由!」みたいなことを書いてありました。

が、外資IT企業に勤める私からすると、

「激務なIT営業もいるけれど、まったり営業(9:30~18:30)でたまに直行直帰するようなまったり営業」もけっこういるよ!」

というのが本音です。

ということで、

今回はIT営業が激務になる理由を先に解説し、「実はそこまで激務ではないIT営業」に関しても書いていきますね。

IT営業が激務になる理由①:調整にめちゃくちゃ時間がかかる

調整作業は雑務タスクと時間が削られる仕事ですが、IT営業の場合はより顕著です。

IT営業は1件あたりの受注金額も大きくなり、提案フェーズも数カ月から数年と非常に長期にわたります。

またIT製品やサービスの場合は、プロジェクト自体が破綻になったり、延長したり、思ったような性能が出ないことが日常茶飯事なので、顧客もめちゃくちゃ慎重に色々なリスク要因やメリットデメリットを検討していくため、社内外で多くの調整が必要になります。

このような顧客を説得するためには、めちゃくちゃ調整力が必要なんですよね。

  • このシステムとこのシステムは互換性がない、
  • 机上では基盤とこのアプリはサーティファイされているけれど、国内も国外も事例がない、.大規模システムならどれくらい割引できるか調べないといけない、

というようなことを会社内のエンジニアやITコンサルなどの技術職や、契約部隊、直属の上司、なんかよくわからない部署の人と調節する必要があるのです。

これらのミーティングに参加する全ての人々が複数の案件に関係している場合が殆どなので、そのミーティングのために事前共有事項や資料作成、内部レビュー、会議室の予約、ミーティングに呼ぶ人の選定など細々としたタスクを実施する必要があります。

こういう細かいタスクの積み重ねで時間が恐ろしく早く進んでしまうんですよね。

時間が読みにくい細かいタスクをどのように処理して、調整していくか、それがIT営業に求められるスキルなのですが、そのタスクハンドリングが上手くいかないとマジで激務になります。

IT営業に必要なスキルは別記事で書いているので、ぜひ参考にしてください。

IT営業が激務になる理由②:その期の売上予測がつきやすい

IT営業は提案フェーズが長期化することから、「あ、この案件は今期にはとれそうだな。」とか「このお客さんは去年、システムを刷新したから、2年後くらいじゃないと営業提案できなさそうだな」と大体の予測をつくことが出来ます。

売上予測がつくことの何が悪いの?と思う人もいるかもしれませんが、

これは逆に「今期、契約してくれそうな企業がない。。。」という状態になった場合、

ほとんどの場合は、期末になっても目標の未達に終わります。

  • IT製品やITサービスは高額(数百万~数億円)
  • IT営業の提案フェーズは長期(数カ月~数年)

という性質上、四半期の初めに営業して、その期までに契約クローズするというのは殆どありえません。

この状態にも関わらず、上司が「今期の数字はどうするんだ?」と詰めてくる場合は、

精神的にかなりきついですね。

現場の最前線で働いているIT営業マンからすると、「いくら詰められても、お客が買わないって言っているから売れねえんだよ」と心の中で叫んでいるのですが、

進捗会議や1on1では、実際にあまり効果がなさそうな“目標を達成する何らかの対策”をその場しのぎで上司に説明しないといけませんし、その数字を達成するために長時間労働になりやすいです。

IT営業が激務になる理由③:担当する製品が安定していない場合

IT営業が売るものはIT製品ですが、その製品があまりイケてない製品の場合は、トラブル対応で忙しくなりがちです。

“イケてない製品”というのは、

  • バグが多い
  • 製品に詳しい人が少ない
  • 導入後に顧客が想定した性能値を出せてない

製品のことを指します。

基本的に稼働後の対応は社内のエンジニアやITコンサル、外部のデリバリ―(製品導入)部隊などがいるケースが多いですが、

それでも営業提案時に問題ないと思われた部分でバグが出たり、使えると思った機能が実は使えないということが時々起こります。

顧客の立場からすると、「営業時に君がこの機能は導入できるって言ったから購入したのに、使えないというのはどういうこと?」となるので、

当然、クレームは営業に回されます。

クレーム対応よりも新規開拓や別会社の訪問に時間を割きたいのがIT営業の心中ですが、

相手は自社製品を購入してくれたお得意様。

今回以外のプロジェクト以外でも別製品を購入してくれる可能性も高いし、少なくとも数年後の契約更新の際には、確度の高い顧客になるはずです。

そうなると、IT営業としては、雑にあつかうことも出来ないので、

自分の数字にはなりませんが、クレーム対応を行う必要があり、その準備や根回しなどの雑タスクでまた激務になりがちなのです。

ここまで、

  1. 調整に時間がかかる⇒雑務タスクが多くなる
  2. 売上予測がたちやすい⇒期初に確度高い顧客がいないと売上未達可能性大
  3. イケてない製品を担当する⇒売れないし、契約後の雑タスクが増える

と3つのIT営業が激務になる理由を書きましたが、

ここからはIT営業が激務であるという「誤解」に関して書いていきたいと思います。

IT営業が激務という誤解その①:IT営業でも激務ではないポジションはある

IT営業と言えば、

  • ITサービスを売る場合(SaaSサービス, システムインテグレーション提案など)
  • IT製品を売る場合(パソコン, サーバ, ルーター, アプリケーション, 携帯電話など)
  • SESなどの人材紹介営業(フリーランスの仲介, SESの派遣先と派遣者の調整)

などがあります。IT営業の仕事内容に関しては以下の記事で詳しく解説しています。

とまあ、ここまで種類がわかれて、さらに担当範囲、担当製品のシェアなどによっても異なってくるのですが、

全員が全員、突撃営業をするわけではないので、そこまで激務ではないポジションというのも当然あります。

実はそこまで激務ではないIT営業ポジション①:インサイドセールス

電話やメール、チャットなどを使った営業を行う部隊のことをインサイドセールスと言い、ようは内勤営業です。

インサイドセールスの中でも担当などが細かく決まっているのですが、主な仕事はフィールドセールス(外勤営業)にアポを渡すことになります。

フィールドセールスだと顧客ごとに提案資料を用意したり、根回しなどを行う必要があり、「営業っぽい雑務タスク」がわんさかあふれてくるんですよね。

一方、インサイドセールスもアポとりの戦略という点で色々と工夫はしますが、

アポとりまでは比較的、定型的な業務になるので、そこまで残業しまくりということはありません。

むしろ、パソコンと電話だけあれば可能な仕事なので、会社によってはスーツを着る必要はありませんし、家で仕事することも可能です。

実はそこまで激務ではないIT営業ポジション②:ライセンス営業

エンタープライズの世界でソフトウェアの契約後に、ライセンスの更新や、そもそもライセンスが適切に管理されているかを確認する営業部隊です。

彼らは「すでに購入済みの顧客に対して、更新の営業を行う」というルート営業がどれくらい楽かは想像しやすいでしょう。

IT営業に限らず、きつい営業というのは、新規開拓の営業になります。

他社に追随を許さない圧倒的な新製品ならまだしもIT業界における新規開拓というのは、「もうすでに導入している他社製品をひっぺがして、自分の新製品を導入させる」ということです。

社内IT部門の最上の使命は、最高の性能でも、圧倒的コスパでもなく、

「安定した稼働」なのです。

ITシステムの障害が最も起きやすいタイミングがシステム移行になっているため、

正直、リスクを負ってまでも他社の製品を試したい顧客は殆どいないのです。

実はそこまで激務ではないIT営業ポジション③:パートナー営業

ある程度の規模の会社の製品はパートナーと呼ばれる代理店が売ってくれる場合があります。

ITベンダーの製品をSIerの営業部隊が売ってくれたりすることですね。

この代理店に対して、「うちの製品はよいですよ!ぜひじゃんじゃん売ってください!」と説明する営業部隊になります。

仕事内容としては、営業部隊というよりも、どちらかというとフィールドマーケティング的な仕事が多く、説明会を実施したりする感じですね。

数字目標を持ちますが、売上目標ではないので、最前線のフィールドセールスに比べて、ストレスはありませんし、激務にはなりにくいです。

実はそこまで激務ではないIT営業ポジション④:主力商品を扱う部署

まず前提として、各会社は主力製品と”それ以外の製品”があり、”それ以外の製品”というのはマーケットシェアが低い製品です。

「売りやすい(=マーケットシェアが高い)サービスを担当する嗅覚」というのが、IT営業のスキルの重要な一つですが、

マーケットシェアの低い製品を担当するというのは、売りにくく、数字を上げられないので、結果的に激務になり、本当につらいです。

逆に売上がたてやすい営業は、

「他社へ変更しにくい圧倒的なマーケットシェアを持つITサービス」を担当する営業です。

つまり、その企業の主力商品を扱う花形部署にいる営業ですね。

ここでミソなのは、“他社へ変更しにくい”という点です。

いくら圧倒的なシェアを持っていたとしても、単体で動くアプリケーションなどだと、取り換えが効きやすいのですが、

AWSなどのクラウド基盤の場合、複雑にネットワークや他のアプリケーションなどに紐づかれているので、別のIaaSサービスに変えにくいのです。

私自身もAWSのIT営業マンの友達に聞いたのですが、やはりものすごい売りやすいとは言っていました。

このように他社に変えにくい圧倒的なマーケットシェアを誇る製品を担当したら、売上も立てやすくなり、激務になりにくいのです。

IT営業が激務という誤解その②:めちゃくちゃ電話かけたり、飛び込み訪問することはない

不動産営業や人材営業などのtoCの営業の場合、「今日一日で100件のお宅のチャイムをならすこと」みたいな飛び込み営業がありますが、

IT営業の場合、その製品の性質上、飛び込み営業は殆どありません。

なので、IT営業未経験の人が思う営業の激務さとはちょっと違うのかな~と思います。

どちらかと言うと、見積もりを作ったり、提案資料を作ったりするデスクワークが多くて激務状態になってしまうのだと思います。

私は人材営業も経験したことがあるんですが、1日何百件も電話を鳴らして、飛び込み営業をするというのは、精神的にもきつかったですし、体力的にもめちゃくちゃ激務です。

そう考えると、まだIT営業の方がマシなのかなとは思います。

(やっぱり不動産営業、保険営業、人材営業などの激務度は格別だと思います、、、、)

IT営業が激務という誤解その③:SES営業とごっちゃにしている

ITという言葉はSIer系とWeb系を指しますが、そのビジネスモデルは全く違います。https://karakuri-hachidori.com/difference-it-web/

IT営業もいくつか種類があるのですが、その中でも最も激務だと言われるのが、SESの営業です。

大手SIerの下請け企業などで技術者派遣や企業開拓をする営業ですね。

SES営業が激務になりやすい理由はそもそものビジネスモデルにあります。

技術者を派遣して、報酬を何十パーセント受け取るというスタイルはその企業の技術力とかではなく、純粋にどれくらいの費用でどれくらいの人材を派遣できるか、稼働率はどれくらいか?という違いなので、

普通の派遣屋さんの営業担当と行うことは全く変わりません。

正直、私の中ではIT営業と表現するべきではないかな?と思うくらいITの知識がいらない職種ですね。

薄い利益を重ねるビジネスモデルのため、数多くの受注が必要ですし、給料も上がりにくい営業だと思います。

正直、ビジネスモデル的な原因があるので、SESのIT営業できついと思う人は転職を考えた方がよいでしょう。

このようにIT営業とSES営業はかなり違いがありますが、一般的にみればごっちゃごちゃにされやすいです。

特に大手SIerの場合、ビジネスの種類が多岐にわたり、それに合わせて営業の種類も多いため、IT営業もSES営業も行っている場合があるのです。

このように一言にIT営業が激務かどうか?というのは一言で表せられないのが、現状です。

ただ、その分だけIT営業でのキャリアプランは幅が広く、またアップサイドがあり、年収1000万円以上を十分狙える仕事になります。

自分が将来何をしたいか、どのようなキャリアを描きたいか?

どこまで激務度を許容できるか?などは一度考えても良いかもしれませんね。