【ガチ体験】知られざるIT業界、SIer業界、Web業界の違いとは?現役ITコンサルが解説

からはち(@kara_hachi)です。

私はいわゆるIT業界で働いているので、「IT業界はさ~」と語りがちですが、

SIer業界(システムインテグレータ業界)とWeb業界は全く業界慣習が異なり、

私はついついSIer業界目線で話してしまいます。

ただこれは私に限った話ではなく、SIer系企業だろうがWeb系企業だろうが、自分たちを基準に話がちです。

だから非IT業界の人が「IT業界は・・・・」と色々な人から話を聞くと、

  • 客先常駐でしんどそう
  • 私服で自由そう
  • ハッカソンとかしてそう
  • デスマーチやばそう
  • 給料高そう
  • 手に職っていいよね
  • 従業員の平均年齢が20代とかありそう

というようなSIer業界とWeb業界をごっちゃにしたイメージを持つ人がそこそこいます。

この記事では「これからIT業界で働きたいな」と思う人や「IT業界ってどんなんなの?」というような人に向けて「IT業界とは?Web業界とSIer業界って何が違うの?」ということを現役ITコンサルの私が解説します。

Web業界もSIer業界もIT業界だけど、それぞれ自分の業界をIT業界と主張する

SIer企業Web企業

最初に一言で説明すると、「SIerもWebも同じIT業界の一つの種類」となります。

が、面白いのが、Web業界もSIer業界もそれぞれ「俺たちがIT業界!」と主張しているんですよね。

両方とも間違いではないのですが、あまりにも慣習が違うので、IT業界ではなく、SIer業界とかWeb業界というように定義した方がよいでしょう。

例えるなら、「職業は外食関係です!」と言っても、

牛丼屋で盛り付けをしている人と、

5つ星レストランでシェフをしている人では

仕事内容も求められるスキルも全く異なるようなものです。

もうすこしイメージしやすいように、

それぞれの業界の代表的な企業をサクッと挙げておきましょう。

代表的なSIer企業とは?

代表的なSIer企業としては、日本IBM、富士通、HP、Oracle、SAP、伊藤忠テクノソリューションズ、NTTデータ、アクセンチュアとかですね。

B to Bの仕事が中心だからか、就活などを通じて名前を知る人が多く、一般的な知名度はWeb系企業に比べて高くありません。

代表的なWeb企業とは?

一方、代表的なWeb系企業としては、サイバーエージェント、楽天、メルカリ、ヤフー、DeNA、LINEとかですかね。ゲームやショッピングサービス等、CMも多く、IT業界に詳しくない人も名前を聞いたことがあるのではないでしょうか?

求められる技術の違い(SIer業界VS Web業界)

Web系企業の方が圧倒的に、高い技術力が求められます。

toCのために新製品を開発することになるので、フロントサイドからバックサイド、ネットワークからOSやOSSまで幅広い人材を集める必要がありますし、

最近ではモジュール化やライブラリ化が進んでいたとしても、まだまだ開発する部分は多く残っています。

一方、SIer業界の場合、基本的にすでに開発済みのクラウドサービスやパッケージ製品の導入になるので、プログラミングがあまり必要じゃないんですよね。

必要だったとしても、大手SIerの下請けとして、

JavaやCなどの古めな言語で、アドオンやインタフェース開発することになるので、

「イノベーティブな製品を開発するぜ!」というような仕事はありません。

その分、PowerPointでの提案資料やWordやExcelでの要件定義書や工数管理などが重要になります。

【Web系企業で必要な技術】

  • プログラミングスキル
  • サーバサイド、ネットワーク、OSSの知識等
  • 数学力

【SI系企業で必要な技術】

  • Word, Excel, PowerPointでの資料作成
  • 全般的なIT知識
  • IT製品知識

「技術者として成長できるならWeb系企業が良いのでは?」と思う人もいるかもしれませんが、

私的には本人の希望によるかな?と思っています。

技術力の高い集団にいても自分の能力が釣り合わないと精神的に辛いと思いますし、

「技術が好き」というレベル感も違っていて、小学生からゲームソフト自作している人と、「営業よりはマシ」と思っている人では目指す目的も異なってきます。

平均年収の違い(SIer業界VS Web業界)

年収の違いは一概に言えませんが、平均的にはSIerの方が高いと言えます。

【代表的なSIer企業の平均年収】

  • アクセンチュア:平均年収1000万円
  • SAPジャパン:平均年収1000万円
  • 富士通:平均年収800万円
  • 日本IBM:平均年収800万円
  • 日本オラクル:平均年収1000万円

【代表的なWeb系企業の平均年収】

  • LINE:平均年収700万円
  • サイバーエージェント:平均年収700万円
  • DeNA:平均年収750万円
  • 楽天:平均年収800万円
  • ヤフージャパン:平均年収750万円  

Web系企業の方がイケイケな感じがしますが、平均年収が1000万円を超えている会社はありません。なぜ地味っぽいSIer企業の方が平均年収が高いのでしょうか?

私が考える理由は3つあります。

  • SIerの方が平均年齢が高い
  • GAFAに匹敵する給与水準を出すWeb系企業が皆無
  • SIer業界は単価の高い仕事が継続的に発生する

SIerの方が平均年齢が高い

Web系企業は平均年齢が30代やベンチャー企業の場合は20代というのはザラですが、SIer業界は日本IBMや富士通などの老舗IT企業が多く、平均年齢は40歳を超える場合が大半です。

当たり前と言えば、当たり前ですが、平均年齢が高い企業の平均年収を合わせて高くなります。

GAFAに匹敵する給与水準を出すWeb系企業が皆無

Web系企業の功罪の罪の部分として、技術者に対しての給料水準が非常に低いです。

大手企業の給料が低いため、ベンチャー企業はより低くなりがちです。

SIer業界もゼネコンのような大手企業の二次請け、三次請けとなると給料はめちゃくちゃ低くなりますが、

大手企業の平均年収は1000万円は超えていますね。

SIer業界は単価の高い仕事が継続的に発生する

Web系企業の辛いところは「インターネットは基本的に無料」という考えのユーザーを

相手にビジネスをしなくてはならないということです。

メディアだろうが、ゲームだろうが、画期的なサービスだろうが、

「フリーミアム」や「広告収益」が主な収入になり、それは決して高くありません。

またどんなに画期的なサービスでも類似の新規サービスがボコボコ出てきて、

過当競争になりますし、流行り廃りが本当に激しいですよね。

(SNSなら前略プロフ⇒ミクシイ⇒Facebook⇒Twitter⇒Instagramのような感じですし、メディアならキュレーションメディアなども流行りましたね。)

一方、SIer企業の場合は、

基幹システムのライセンス更新や保守メンテ契約の終了に伴うバージョンのアップグレードやシステム移行などが頻繁に行われます。

その度に数千万~数億のお金が動くので、細々した広告収入よりも実入りは良いですし、

大型システムは契約も複雑で、各社法務がめちゃくちゃ強いので、プライムベンダーとして新規参入するのは参入障壁が高いのです。

またその数千万~数億が何年かに一回ペースで起きるので、それは美味しいですよね。

(数年後まで顧客をキープ出来るかはまた別の話ですが・・・笑)

客先常駐の有無(SIer業界VS Web業界)

Web業界では本社で開発業務に従事しますが、SIer企業はオンプレミス製品の導入をする場合や社内ネットワーク内での開発を行う場合は、客先常駐を行います。

ひと昔前は、SIer業界と言えば、客先常駐上等!という世界でしたが、世界的なクラウドシフトでSIerの働き方も変化して、リモート作業も多くなりました。

働き方という点ではVPNとかを使えば、社内サイトにもアクセスできるので、そこまで差はないのでは?と思っていますね。

営業社員との関わり合い (SIer業界VS Web業界)

私が個人的に面白いなと思っているのが、Web系企業では【開発⇒営業】という形ですが、SIer企業では【営業⇒(開発済みの製品の)導入】になるのです。

SIer企業では、もうすでにクラウドサービスやパッケージ製品化されており、契約が決まって導入する段階になってからSEやITコンサルが関わるんですよね。

なので、Web系企業では技術者優遇、SIer業界では営業優遇になる傾向があります。

まとめ

IT業界と一言で言っても、Web業界SIer業界だったら全く商習慣や必要とされる技術も違う別世界です。

「欧米」という、全く文化の違う欧州とアメリカをごちゃ混ぜにした想像上の世界を語るようなものですね。

曖昧な言葉で包むのではなく、しっかりIT業界の中のSIer業界かWeb業界か区別する必要があります。

そのため、

「IT業界は○○」という言葉を聞いた時はその話した人がSIer業界かWeb業界かを知ってから、「IT業界(=SIer)は○○」、「IT業界(=Web)は○○」と脳内変換してみてくださいね。