ITコンサルタントとSIerの「客先常駐」の違いと真実について

からはち(@kara_hachi)です。

ITコンサルタントは、様々な製品を取り扱いますが、それでも自分の部署が主に取り扱う製品というのがあります。それが私の場合は、オンプレミスのERP製品でした。

「オンプレミス」ということはやっぱり客先常駐が多くなるのではと恐怖し、「ITコンサルタント 客先常駐」と何度も調べたものです。(笑)

ITコンサルタントとSIerとの「客先常駐」の違い

ITコンサルタントと客先常駐に関して調べたこともありますが、戦略コンサルタントやSIerの客先常駐プロジェクトに関しての情報くらいしか出てこなかったので、私自身の経験を元に「ITコンサルタントの常駐の実態」に関して書いていきたいと思います。

まず大前提としては、ITコンサルタントだろうが、SIerだろうが、プロジェクトとお客さんによって常駐環境は天と地ほどもあるということです。

会社のパソコンや携帯電話を持ち込めないような客先もあれば、

服装自由で、出入りも入館カードがあれば出入り自由という客先もあります。

システムの導入前から運用範囲や工数を煮詰め切れていない炎上必死のヤバいプロジェクトだったら、環境が良くても、顧客が良い人でも、地獄のプロジェクトになる場合もあります。

そもそも大前提としては、常駐する客先の環境は「プロジェクトの難度(人、もの、金)」、「顧客のセキュリティレベル」、「既存システムの設計書や資料の充足具合」、「顧客のITリテラシーや性格」等々、複数の要素が組み合わさって決まります。

その前提を踏まえて、ITコンサルタントの客先常駐と他の業種の客先常駐は何が違うのか?というのは、一言で言うと「SIerに似ているが、プロジェクトの舵を握ることが出来る」というものです。

SIerの客先常駐は契約や派遣の形態によって多岐にわたる

SIerの客先常駐というのは、SESのような実質派遣であったり、工数に課金する人月商売だったり、クライアントでの常駐開発だったりもしますし、期限が決められている場合と決められていない場合があります。

偽装請負や多重請負などの問題も起きている複雑な分野なので、今回は触れないでおきます。

一般的なSIerの客先常駐というのは、大きくわけて2つ、「システム刷新や新規導入を推し進めるプロジェクト型」や「システムの保守などの運用型」に分かれます。

文面を見れば、想像がつくようにプロジェクト型は「システム提案~導入~教育」までというように期間が決まっており、運用型は顧客先の技術支援や保守などの名目で潜り込んでいる期間が決まっていない形での常駐になります。

ここで注意してもらいたいのは、二つにわけたのはあくまで「おおまかに」ということです。

実際の現場で、何千億円~何兆円の売り上げを誇るような企業の場合、複数のプロジェクトが走っているのが通常であり、その巨大企業内で様々なプロジェクトに関わりつつ、保守運用など「プロジェクト型常駐も運用型も行う」場合も多々あります。

また、二次受け、三次受けのような形になっており、「とりあえず人出しとくので、使ってくだせえw」みたいな客先常駐もあります。

SIerの客先常駐のメリット

ITコンサルタントの常駐に比べて、SIerのメリットとは様々な製品や開発プロジェクトに携わることだと思います。例えば、私の場合、新卒からITコンサルタントというキャリアなので、自社の製品知識しか深めてこなかったですし、他社製品の特長などもわからず、たまにREST APIやインターフェース開発を行うくらいなものです。

なので、正直、技術レベルといった点では、SIerの方がITコンサルタントに比べて遥かに広い知識と経験を持っているのではないかと思います。

-SIerの客先常駐のデメリット

SIerのデメリットとは様々な製品や開発プロジェクトに携わることだと思います。

「え?メリットじゃないの?言ってること違うじゃん」と思う人がいるかもしれませんが、様々な製品や開発プロジェクトに参加出来るからといって、自分の興味のあるプロジェクトを選べるわけではないからです。

また常駐先やプロジェクト、製品などはコロコロ変わるので、製品知識や開発技術の深掘りが難しいというデメリットもあります。

そのたびに、自分で製品のキャッチアップをし続けなければならないというのは中々辛いですよね。

他にも、客先によっては社員食堂が使えず、毎度外食する必要があったり、持ち家から2時間以上かけて通わないといけなかったり、ふたのついていない飲み物の持ち込み禁止だったり、スーツのシャツの柄まで指定されたり等々、色々デメリットはありますが、これらに関しては、SIerというより、セキュリティが厳しい客先常駐自体のデメリットなので、話がずれてしまいましたね。

また別記事でまとめたいと思います。

ITコンサルタントの客先常駐の真実とSIerとの違い

先ほど、ITコンサルタントの客先常駐に関して「SIerに似ているが、プロジェクトの舵を握ることが出来る」と書きましたが、それをより具体的に説明していきたいと思います。

基本的に自社製品のみが担当範囲(ただしベンダー系のみ)

ITコンサルタントがプロジェクトの舵をとることが出来る大きな理由が「自社製品を取り扱う」ということです。営業が提案したシステム構成の中で、自社製品のみが担当範囲であるので、その範囲内でプロジェクトの舵を握ることが出来ます。

それはなぜか?

自社製品ということは、構成されるチームはその製品の導入経験のある場合が多く、顧客よりも製品知識があるために、工数やWBSを主導で引くことが出来ます。

つまり、「明らかに顧客に無理なスケジュールを引かせられるケースが少なくなる。」ということです。

(あくまで少なくなるというのは傾向で、営業の売り方やコンサルの人材配置ミス、顧客との認識違いによる遅延や炎上が全くない訳ではありません。)

そして自社製品を導入するということは知見がどんどん深くなり、プロフェッショナル化します。ある商品のプロフェッショナルになることが出来れば、類似製品や周辺製品のキャッチアップなども爆速になるでしょう。

そして、自社製品を扱うということは「わからないことがあれば、自社の有識者に気軽に質問することが出来る」というメリットもあります。

転職や異動、新しい製品のキャッチアップなどの際に、マニュアルや検証環境以外にも「質問できる相手がいる」ということは本当に心強いです。

自社製品を持つ会社は開発が可能な技術力があり、かつ体力のある企業になります。

そのような会社のITコンサルタントの単価は目が飛び出るほど高いですが、その金額には、ITコンサルタントのフィーだけではなく、その背後にいる会社の知識財産も含めた値段になるのでしょう。

ITコンサルタントの単価の高さは半端ではない

SIerに比べて、ITコンサルタントの単価はめちゃくちゃ高いです。私が新卒の際に自分の単価と協力会社のSIerさんとの単価を比べた際に、新卒の私の方が2倍~3倍ほど高かったのです。

私が所属している会社の単価がべらぼうに高いという事実もありますが、そのような値段だと顧客も「出来るなら、導入後はなるべく迅速にスキルトランスファーして、自社(または下請け)で運用したい」と思います。

そのため、ITコンサルタントは何年も常駐するということは稀で、長年常駐する場合は、大手自動車メーカーや銀行など、売り上げ何千億以上の会社になります。

現役ITコンサルタントの所感

私も何度も客先常駐を行いましたが、顧客が大手ばかりだったからか、劣悪な環境というのは殆どありませんでした。(プロジェクト自体が炎上したことはありますが。。。)

ただ、SIerから転職された方にきいてみると、「大きい会社でも狭い机と椅子、それに微妙なスペックのデスクトップを貸し与えられて、ずらっと並んでいる状況は非人道的な現代の蟹工船」とのことでした。

セキュリティ強化や規則などで、外部の人間(客先常駐する人)に対して厳しくなるのはわかりますが、 短くて数週間、長ければ何年も常駐する人々達の処遇の改善は行われてほしいのです。

ただ、これからは大規模システムのオンプレミスからクラウドへの大転換が本格的に進むので、それに伴い、客先常駐ではなく、先訪問と場所を選ばず導入を行うという働き方が一般的になるのではないかと思っています。

指定された柄のシャツとスーツを着た、入館&退館も自由に行えず、スマホやパソコンも持ち込めず、社食を利用できず、外食でお金を減らす、そんな人々が減りますように。