Sです。
「文系でもITコンサルタントになれますか?」という質問をOB訪問や新卒の人から受けることがあります。
端的に言ってしまうと、理系の方が優秀な傾向があるけれど、文系でも活躍している人はいる。ただ、全く情報系に触れたこともなく、勉強嫌いの人は向いていない。ということです。
これだけ覚えてくれれば、もう必要十分だと思いますが、文系から外資系ITコンサルタントになった私の経験や周りへのヒアリングからもうちょっとだけ詳しく説明していきたいと思います。
そもそも理系と情報系の学部って別だよね?って話
日本だと文系、理系で分かれがちですが、ITの世界(というか私の中)では「文系」「理系」「情報系」の学部に分かれます。
ただ、最近の大学では「とりあえずグローバルや!」「今の時代はITっしょ!」みたいなノリで、「グローバルIT学部」だの「国際日本情報学部」のようなよくわからない学部が雨後の筍ごとく、ポコポコ出てきています。
そのため今回は「文系」「理系」「実学の情報系」「机上の情報系」に分けたいと思います。
「実学の情報系」というのは実際にプログラミングを行ってプロダクトを作成出来るコンピューターサイエンスのような学部で、「机上の情報系」は教科書でITセキュリティやITと生活のかかわり方などは学ぶが、プログラミング出来ない学部です。
そして、私が考える「ITコンサルタントとして向いている学部」というのは、以下の通りになります。
やっぱり「実学の情報系」がダントツにできるイメージがありますね。
その次は「理系」の人々で、その下に、「文系」と「机上の情報系」が並ぶイメージです。
「文系も理系もITには関係ない」という人の言い分
「実学の情報系」が一番優秀なのはわかると思います。実際にプログラミングで製品を作り、システム構成を理解している訳ですからね。
一方で、「理系」と「文系」となると、「IT関連の仕事には理系と文系も違いはない」という人々もいます。彼らは「文系出身のエンジニアは多い」、「理系でもプログラミングの授業なんて極一部」等々、様々なことを言います。
文系の人数は多い=理系も文系も関係ないは暴論
「文系の人間がこんなに多い」という論はかなり暴論です。というのも高校や大学でわかる通り、理系の人数はそもそも少なく、文系の方が圧倒的に多いと言えます。
そのため、文系の人が多いのは全く不思議ではありません。「文系出身の人がどれくらいIT関連の仕事についているのか」ではなく、「文系出身のIT関連の人がどれくらいの割合で辞めているのか、出世競争から脱落したのか?」ということを考えなければなりません。
このような統計はないので、あくまで経験という偏りになりますが、やはり理系の人の方が優秀な傾向があります。
「文系の人にエンジニア、ITコンサルタント、SIerなどが務まらないというのか?」と言われるとそういうことではありません。理系でもITの世界が合わずに辞める人もいるし、優秀ではない人もゴマンといます。
IT業界全般を見ると、文系の人が多いですし、むしろ出世というコーディングとは関係のない世界になると、トップは文系出身の方が多くなるかもしれません。
しかし、「理系」と「文系」という単純な割合なら「サバイバル率」と「優秀な人材率」は理系の方が圧倒的に高いでしょう。
理系の授業にプログラミングは少しだけ→経験ゼロとは全く違う
「理系にはプログラミングの授業などは少ないから、文系に比べてそこまでアドバンテージがあるわけではないよ」と言う人もいるかもしれません。
たしかに理系と言っても、物理学部、工学部、生物学部など多種多様で、それぞれがプログラミングをガッツリ勉強するかというとNoです。
しかし、少しでもプログラミング経験があるというのはかなり大きいです。もちろん大学の講義でのプログラミングの程度にもよりますが、大体は理系の基礎教養として、ベーシックな言語によるプログラミングを行います。「このプログラミングの差がそのまま優秀さに繋がるから有利!」という訳ではなく、「プログラミングに対する好き/嫌い」がわかるので、好きな人は情報系へ、嫌いな人は非情報系の仕事に就くことが出来るでしょう。
しかし、プログラミング経験のない文系の場合、「転職に有利だから・・・」とか「なんとなくイケてそう」という理由で就職活動の時にIT業界に力を入れてしまうケースが多々あります。
そして日本の新卒採用は「ポテンシャル採用」という名目でエントリーシートや面接のみで文系の未経験エンジニア、エンジニア、ITコンサルタントを採用しますし、むしろその方が主流です。
この「適正がわかっていない文系学生」と「ポテンシャル採用を行う企業」のコンビが大量の文系SIerや文系エンジニア、文系ITコンサルタントを生み出し、大量に廃棄していくのです。
もちろん制作物のポートフォリオを要求する会社もありますが、そのような新卒にも高い技術力を求める会社に応募できる人は、理系の院卒(画像認識などの分野の違うプログラミング経験)、文理問わず、学生時代からプログラミングにハマった人くらいなものです。
正直、母数としては、かなり少ないといってもよいでしょう。
話がそれたので、まとめると「理系はプログラミングの授業で好き/嫌いがわかるため、就活時に好きな人は情報系、嫌いな人は非情報系に分かれるが、文系は入社後の研修や配属時にIT系の仕事の好き/嫌いがわかるため、離職率が高いし、優秀な人材率も下がる。」ということです。
文系の方が「コミュニケーション能力」やら「英語力」があるという意見
「文系の方が、英語力が高い人も多いし、生来的にコミュニケーション能力が高い人が多い。だから彼らがプログラミングやIT知識を覚えれば、コミュニケーションが出来る優秀なエンジニアやエンジニアになる」という意見もあります。
これも誤解があるのですが、IT人材における必要なコミュニケーション能力と一般的に必要とされるコミュニケーション能力というのは違います。
IT業界において、陽気で誰とでも仲良くなれる「根アカ」のような人がコミュニケーション能力は必要とされていません。
それよりも「報告・連絡・相談」がしっかりでき、お客さん(企業のIT部門の担当者や他社のエンジニア)と会話できるITリテラシーがある人のことを指します。
そのような「IT業界のコミュ力」を前提に陽気で、だれとも仲良く出来る人は確かに重宝されると思います。
しかし、あくまで重要なのは「ホウレンソウ」と「ITリテラシー」なのです。
英語に関しても誤解があります。
IT業界で一番英語を使う場面の90%以上はドキュメントやナレッジが溜まっているWebサイトを閲覧する時です。
そもそもITというのは英語圏が中心のため、最新のアップデート情報などは英語で、マニュアルも英語しかないということもよくあります。
しかし、ドキュメントを読むだけなら、Google翻訳でも十分理解できるので、英語力は最低限も問題ないと思います。
それ以上に必要なのは、ITリテラシーです。
正直、ITリテラシーがないなら、英語どころか日本語のマニュアルを読んでも理解するのは非常に難しいと思います。
つまり、コミュニケーション能力も英語力もITリテラシーという土台にある上で、役に立つということです。
文系と理系の最も大きな差は「勉強の質と量」
私個人が一番大きい差だと思うのは、「文系と理系では勉強への姿勢が違う」ということです。日本の大学生は世界で最も勉強しないと言われますが、その中でも文系の勉強時間は理系の半分と言われています。さらに研究室にいる理系は休みもないくらい研究をして、何年にも渡る結果を求め続けています。
一方、文系大学生の場合、(というか私の場合。笑)多くの学部では、テスト前にレジュメやノートや過去問集めに奔走し、一夜漬けで乗り越えるという人も多いのではないでしょうか?(公認会計士試験や司法試験、留学のための英語勉強などは大学のカリキュラムとは異なるので、除外しておいてくださいね。)
IT業界は、ITコンサルタントだろうが、エンジニアだろうが、SIerだろうが、一生勉強し続けなければならない業界です。
エンジニアは新しい技術を業務中も休暇中も勉強し続ける必要があります。ITコンサルタントやSIerでも新しい製品知識やその周辺のITリテラシーを磨き続ける必要があるのです。
「勉強は嫌いではないが、大学受験もなんとか乗り越えたし、大丈夫」という人がいますが、その時の勉強方法を思い出しましょう。
「日本史、世界史、英語はとりあえず単語を繰り返して、参考書を何周もすれば大丈夫だろう」という勉強方法をしている人は考えて勉強している訳ではなく、単に脳内メモリに単語を詰め込んだだけになります。
そして、そのような勉強の癖は大学でも抜けきれず、テスト前に徹夜で勉強して、テスト後に全て忘れる「一夜漬けマン」になります。
逆に数学などの理系分野は積み重ねた前提を理解する必要があります。
例えば、【二次方程式を理解する必要がある。】という場合。
二次方程式を理解するためには、一次方程式を理解する必要があり、
一次方程式を理解するためには、分数を理解する必要があり、
分数を理解するためには、掛け算や割り算を理解する必要があり、
掛け算や割り算を理解するためには、足し算や引き算を理解する必要があり、
足し算や引き算を理解するためには、数字の概念を知る必要があります。
このように理系分野は、「ある知識がある前提で理解できる」というのが特徴で、
分数を理解していないのに、二次方程式を解くようなことは出来ないのです。
そして数学に苦手意識を持つ人は、どこかの前提部分でわからなくなり、そのままそれ以上のレベルの数学についていけなくなったというのがほとんどだと思います。(高校数学まで全て理解したけれど、嫌いだったって人も極少数いるかもしれませんが。)
そしてITの知識も「ある言語やプログラムが書けるようになったから終了」とか「ある製品知識を覚えたから終了」という訳ではありません。
ある製品知識を付けたら、その下のデータベースの知識を勉強しないといけなく、データベースを勉強したらその下のOSや仮想マシン、周辺のネットワークなども勉強しないといけません。
各分野それぞれはマスターするのはほぼ不可能な程、深い知識が必要になりますし、その知識もいつかは風化します。
そのため、IT業界は死ぬまで勉強し続ける必要がある業界なのです。新しい知識や概念が出てくる度にキャッチアップを続け、古い概念を前提という知の層の一つに重ねる必要があるのです。
ITコンサルタントにおける文系と理系の違い
これまでは【文系や理系からのIT業界】という範囲で、ITコンサルタントもエンジニアもSIerもごっちゃに話してしまいましたが、ここからは【文系や理系からのITコンサルタント】という範囲で話していきます。
まず結論から言うと、「ITコンサルタントはエンジニアやSIerよりも文系からでも生き残りやすい」です。
ITコンサルタントというポジションは非常に曖昧で、製品ベンダー系スペシャリストを指す場合もありますし、SIerのように開発をする人も、全く開発やインフラを触らずクラウド製品の設定を変えるだけの人もいます。
ただ一般的には「SIer業務も行うが、顧客ともよく会話をし、製品の導入支援を行う」とようなイメージですね。
そのため、SIerよりは技術的に深く&広くなく、顧客との調整が多いということで、文系でも務まる人は比較的に多いと肌で感じます。
しかし、前述した通り、顧客というのは、お客さん先のIT部門の人々がほとんどで、何なら自分よりもITコンサルタントやSIer経験が長い人がいるので、ITリテラシーを持った上での会話となることを覚えておく必要があります。
正直、だれが優秀なITコンサルタントになるかはわからない
ここまでつらつら書いてきましたが、正直だれが優秀なITコンサルタントになるかはわからないというのが実際です。
私の同期の優秀度は綺麗に学歴と専攻が綺麗に比例している感じなのですが、学部卒の文系の人でもめちゃくちゃ優秀な人もいます。(その人は大学ではExcelの講師っぽいことをしていたので、その素養があるのかもしれませんが。)
私の直属の上司も日東駒専の文系出身ですが、技術にも精通しているキレキレの人物です。
このように個々のケースを上げれば、「文系でもITコンサルタントになれる」というのは間違いではありません。
「文系 エンジニア」とか「文系 プログラマー」と検索すればポジティブなことはいくらでも見つかります。
ただ「自分に適正があるのか」というのは別の話です。
新卒でITコンサルタントになって、同期もそれぞれ成長して、差がついてきました。そのようなことを鑑みて、
「やはり傾向としては、理系の人が多いのではないかな?」というのが現場で働く一人のITコンサルタントの見解です。